「ボビー」2007/03/04 14:38:19

「ボビー」という映画を観てきました。
俳優のエミリオ・エステヴェスが監督・脚本した映画です。

米大統領ジョン・F・ケネディの暗殺事件は有名ですが、その弟、ロバート・F・ケネディも暗殺されていたとは知りませんでした。
それも大統領選に出馬し、民主党の予備選挙で勝利し、次期大統領への期待が高まった時に。
兄弟とも、大統領への途を暗殺によって断たれたことになります。

映画は、ロバート・Fケネディが暗殺された1968年6月5日のカリフォルニア、アンバサダーホテルを舞台に、暗殺が行われた1日を描いたものです。
しかし、ケネディを描くのではなく、その日、そのホテルにいた白人、黒人、メキシコ人、ホテルの従業員、元ドアマン、客、ホテルで公演しに来た歌手など、それぞれの1日を描いてゆく、いわゆる「グランド・ホテル」形式の映画です。
「グランド・ホテル」形式と言うと、最近では「有頂天ホテル」を思い出しますが、あの映画も私はそれなりに楽しんだのですが、これを観ると、薄っぺらに思えて仕方ありませんでした。
アンソニー・ホプキンス、ローレンス・フィッシュバーン、ウィリアム・H・メイシーなどの芸達者が揃っている見応えと言うのは勿論、あります。
でもそれだけじゃない。社会の中に、抜き難い亀裂と言うか、階級がある。一見目には見えなくても、場所を移せばそれが如実に分かる。「厨房にこんなに白人がいるのは初めてだ!」というセリフだけにもそれが表れています。
(コック役のローレンス・フィッシュバーンがとてもいいです)
ホテルの様々な面を見せてゆく中で、映画はそのことを描いてゆきます。

この国(日本)には、本当にそんな亀裂はないのでしょうか?
そういうことを描いた映画がどれほど世に出てくるか。それが、その社会がどれほど自分たちの姿を直視しているかの目安になるのかも知れません。

この映画が優れているのは、グランド・ホテル形式で豊かな人間像を描いているから、だけではありません。
それらのドラマは勿論、ロバート・F・ケネディの暗殺事件に収斂してゆきます。
そしてその時に、何故、この映画が今、作られたかが分かるのです。
脚本・監督のエミリオ・エステヴェスのメッセージが真っすぐに観る者に飛んできます。
ラストの何分間は、泣いてしまいました。
しかし、この映画は、泣かせるために作られたのではありません。

何故、この映画がこんなにひっそりと公開されねばならないのか。
だからせめて、もっと多くの人にこの映画を観てもらいたい。
観てもらうべき映画だと、私は思います。

「バッテリー」2007/03/17 03:13:13

話題になっている原作の映画化。
監督は滝田洋二朗氏だし、外れはなかろうと思っていたが、やはり観て損はなかった。
傑作とは言わないが、十分に佳作と思う。

まず、主人公・巧の家族の中での位置、特に母親との距離が微妙なことが冒頭から明らかにされそこから引き込まれてゆく。
母親、父親、弟、祖父、豪を始めとする新しい友人たちの位置が次第にはっきりきて、ドラマの骨格が浮かび上がってくる。

最初、固かった巧の表情、特に目の輝きが、後半から実に活き活きとしてくる。
笑顔が活きてくる。
クライマックスで、最高の笑顔になる。
観客には、そこで、その直前のシーンの父親の、(「巧に教えてやりたいんだ」という)セリフが効いてくる筈だ。
そして、ラストの終わらせ方も心憎い。
原作を読んでみたい、と思う気持ちになった。

駄作なら、原作を読みたいとは思わないだろう。
傑作で映画だけで満足出来るなら、やはりそこで終わってしまうかも知れない。
その中間。でも決して悪い意味ではない。
よく出来ていると思う。
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