厳罰化と格差社会2009/03/29 00:50:16

今朝の朝日新聞に興味ある記事が載っていました。

厳しい処罰に犯罪の抑止効果はない、ということはこれまでにも統計的に主張されてきましたが、刑罰の厳罰化は、格差拡大により社会に不信感が増してきたことが原因だ、というものです。

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『単眼 複眼』
「世界で進む厳罰化 シンポ報告」
背景に格差・二大政党?

 世論が犯罪者を厳罰に処すよう望み、刑務所に人々が拘禁される率が高まるーー。龍谷大学で21日開かれたシンポジウム「グローバル化する厳罰化とポピュリズム」では、世界各国で厳罰化が進む現状が報告、分析された。中で目を引いたのは、「格差社会」と「二大政党制」が「厳罰化」の背景にあるとする論だった。
 フィンランド国立司法研究所のタピオ・ラッピ=ゼッパーラ所長が、拘禁率が低い北欧諸国と他の欧米諸国を比較し、いくつかの要因との相関関係を検討した。20カ国の犯罪被害率や犯罪認知件数は、拘禁率とは相関性がなかった。厳しい処罰に犯罪の抑止効果は望めないのである。日本では近年、犯罪件数と拘禁率がともに上昇しているが、拘禁率の方が犯罪件数より先に上がっている。「厳罰化、先にありき」が分かる。
 一方、所得の不平等を表す「ジニ係数」と拘禁率には高い相関関係が見られた。特に所得格差が大きいイギリス、スペイン、ポルトガルでは、人口10万人あたりの収容者数は120人を超えている。格差が小さいフィンランド、スウェーデン、デンマークはいずれも80人以下だ。国内総生産(GDP)に占める福祉支出の割合や一人当たりの福祉給付額と拘禁率は反比例した。
 ゼッパーラ所長は「充実した福祉や所得の平等は、社会制度や他人への信頼感を高める。信頼の強い制度は、人を厳しく罰するような派手なジェスチャーを必要としない。国民の順法精神も高まる」と説明した。裏返せば、「死刑」や「無期懲役」を乱発する社会派、不信感に満ちているともいえる。
 政治システムではアメリカ、イギリスなど二大政党制を採る国で拘禁率が高かった。ほどよい「落としどころ」への合意形成より、対決姿勢が重視され、国民は常に白か黒かの判断を迫られる。こうした社会では、刑罰も「死刑」かさもなくば「無罪」か、判断が極端になりがちだ、という。
 ハワイ大学のデビッド・ジョンソン教授は「日本はアジア諸国で唯一、拘禁率と死刑がセットで増加している」と指摘した。たしかに日本では、この10年間、所得格差が増大し、政治体制も着実に二大政党制に向かった。死刑増加の背景に、社会の変化に伴う他者への信頼感の衰えが潜んでいるとすれば、これほど恐ろしいことはない。
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社会間の格差が広がると社会不安が増大し、厳罰化が進む、とは感覚的に感じていたことなので、得心の行く記事です。

厳罰化を求める社会の声は、義憤による正義感というより、社会への不満、苛々感の鬱憤晴らしのような気がします。
(例えそれが義憤によるものだとしても、義憤で人の命を落としていいのか、とも思います)
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