朝日新聞の連載コラム「池上彰の新聞ななめ読み」掲載拒否問題に関して2014/09/05 02:00:58

朝日新聞の連載コラム「池上彰の新聞ななめ読み」。
朝日新聞が8月5、6日に掲載した慰安婦報道検証記事を対象にしたそのコラムの掲載を朝日新聞が拒否した事は、直ぐに過ちを認め撤回したとは言え、朝日新聞にとって大きな汚点となってしまいました。

「従軍慰安婦」などどこの国の軍隊でもやっていたこと、あれは売春婦だった、などと言って、朝日新聞の慰安婦報道を従来から苦々しく思っていた人たちはここぞとばかりに朝日批判を繰り返しています。

ですがそういう人たちは、当の池上彰氏がそのコラムの中で言及している次の一節には、決して触れないでしょう。
なので、ここに紹介しておきます。(以下、池上彰氏の記事を『』で表します)

『朝日の記事が間違っていたからといって、「慰安婦」と呼ばれた女性たちがいたことは事実です。これを今後も報道することは大事なことです。』

(済州島で日本軍が女性たちを強制連行したという)吉田清治氏の証言が虚偽だったからと言って、日本による占領下、日本軍の管理した慰安所で、「慰安婦」として不本意に日に何人もの日本兵の相手をさせられた女性がいた事実は変わりません。
それが慰安婦問題の最も大事な点です。
この吉田氏の虚偽証言に基づいた記事に関して、池上氏はこうも言っています。

『今回の検証特集では、他紙の報道についても触れ、吉田氏の証言は他紙も報じた、挺身隊と慰安婦の混同は他紙もしていたと書いています。問題は朝日の報道の過ちです。他社を引き合いに出すのは潔くありません。』

そう。日本軍が占領地の女性たちを慰安婦としたのが問題なのです。
他国もこれまでの歴史の中で同様のことをやっていたかもしれません。ですがこれは私たちの問題なのです。そして己の問題に向き合ってこそ、他国の行いにも物が言えるのでは無いでしょうか?

『新聞記者は、事実の前で謙虚になるべきです。過ちは潔く認め、謝罪する。これは国と国との関係であっても、新聞記者のモラルとしても、同じことではないでしょうか。』

確かに、今の中国には大いに問題ありです。韓国の姿勢にもやり過ぎの感があります。ですがそれらも元々は、戦後ずっと、我が国の政権中枢の政治家が15年戦争の責任を明言してこなかったこと、政府として何かを表明する度に必ず、政権近辺の政治家がそれに異を唱えてぶち壊してきた、そのことに原因があります。そしてその度合いは近年ますますひどくなっています。

あの戦争は日本軍が中国大陸や東南アジアの国々に行(い)っておこなったのです。その逆ではありません。

日本の占領のおかげで中国にも朝鮮にも鉄道が敷かれ産業が興ったのだという人もいます。ですが、それらはまず第一に自分たちの利益のためだった筈です。それにその立場が逆だったら、日本列島が中国やソ連(当時)に占領され、それでインフラが整えられたとしたら、私たちはそれを、占領してくれてありがとう、と感謝するのでしょうか?

自らの過ちを認めてこそ、今の中国に対して、貴方達は私たちが犯した過ちを繰り返そうとしている、と強く言えるのです。

過ちは潔く認め、謝罪する。その潔さが必要なのであり、その姿勢の上にこそ、矜恃と言うものも生まれるのだと私は思います。

朝日新聞バッシングに思う。2014/09/06 21:49:04

以前、朝日新聞は共産主義、社会主義だという集中攻撃がありました。あの時も今のような雰囲気だったと思います。朝日の記事の一節を取り上げて、こんなことを言っているからアカだ、とか、やる訳です。
日頃から朝日新聞を読んでいる私には、朝日のどこが社会主義や共産主義なものか、と思っていました。多くの文章の一節だけを取り上げれば如何様にも評せますから。
でも、日頃は朝日を読んでいない人にはなるほど、と思った人も多かったことでしょう。

今回の朝日叩きにも同じものを感じます。確かに朝日にも詰めの甘さや至らないところがあります。けれどそれは朝日に限ったことでしょうか?
他人のことを言うのは潔くない。まずは自分の振舞いを正せ、と池上彰氏が「ななめ読み」で言ったとおりで、朝日自身は他紙(誌)のことは言いにくいでしょうが(慰安婦報道検証記事でも他紙への言及は控え目な扱いだったと思います)、読者の私が言うのは問題ないでしょう。


佐藤栄作自民党政権時代、沖縄返還を米国と約した佐藤総理は、その裏で、米軍基地跡の原状復帰費用を、米政府が支払うと見せかけて実は日本政府が負担する事を、秘密裏に米国と約束しました。日本国民に知られたら反対の声が沸き起こる事が明白だったからです。そうして為した「沖縄返還」を大きな政治実績と自讃し、ノーベル平和賞まで受賞したのです。

毎日新聞の記者がそれを嗅ぎつけ、記事にしました。彼は外務省の女性職員を通じてその資料を入手し、その過程で二人(共に既婚者)は肉体関係を持ちました。
佐藤政権はそれに対して、国家機密を「女性職員と情を通じて」不当に入手したとして二人を機密漏洩とその教唆で起訴しました。
そして、毎日新聞以外のマスコミは毎日新聞に対し、女性と肉体関係を持って情報を入手したことを執拗に責め立てたのです。裁判の中で「情を通じて」という言葉を用い、事件をセックス絡みの国家機密漏洩事件として強調した佐藤政権の狙いが当たったのです。
この問題の本質は、佐藤政権が、沖縄返還と言う日本にとって重要な事案を、国民を騙し偽りの内容で行った事、その事を国家機密と詐称した事にあったのに、そのことは目眩しされてしまったのです。


佐藤政権が、米国が負担すべき費用を日本が負担すると決めた事は、国家機密でも何でもありません。単に佐藤政権にとって都合が悪いというだけの情報です。

毎日新聞が正しかったことは密約の内容がアメリカで情報公開されたことで明らかになりました。
新聞記者が公務員から情報を入手する際に、相手と肉体関係を持つことは倫理的に適切ではないかもしれません。それはプライバシーに関することではないか、との意見もあるでしょうが、その点は議論されてしかるべきです。
ですが、その点のみが執拗に責め立てられ、本当に問題にすべき事ーー政権が自らに都合の悪い情報を国家機密と詐称して国民から隠し、それを以て自らの「政治的実績」を誇示した事ーーが、有耶無耶になってしまったのは本末転倒であり、佐藤政権の思う壷でした。

従軍慰安婦問題にしても、日本軍が直接的に女性を強制連行したという吉田清治氏の証言は虚偽だった訳ですが、当時、朝鮮、中国、東南アジアを日本が占領し、その占領下、軍の管理の下で現地の女性たちが否応なく日本兵の相手をさせられたことは事実であり、そここそがこの問題の本質です。
朝日新聞が証言に基づく記事を取り消した事は必要であり、遅きに失しましたが、そのことで従軍慰安婦の存在自体を否定することは本末転倒でしかありません。


しかしながら、吉田証言による記事の取消しが遅きに失したのは事実。池上彰氏のコラム「ななめ読み」の掲載見送りは、動揺の中の判断とは言え、あってはならない判断ミスでした。

安倍幹事長(当時)らによるNHKの番組改変問題を報じた時も、NHK当事者への取材時に録音を認めていたかどうかを詰めていなかったことから、(この問題の本質は明らかであり、朝日が報じた事実は裁判判決でも認定されましたが)報道としては曖昧な決着の付け方となってしまいました。

朝日新聞はこれを機として、更に取材・報道の詰めの甘さを無くし、取材・報道の力を高めることに努めるべきです。読者は必ずそれが分かる筈。
自由と民主主義、非軍事・平和主義、脱原発、社会格差の是正、これらを全国紙の中で最も徹底して主張しているのは朝日だと思います。これまで疑問に思う記事も多々ありましたが、それより、そういう朝日らしさを感じる記事が多いからこそ、そう思います。
今、福井地方版で連載しているルポ「東尋坊」も、生活保護を実際に受ける人の現場から言葉を起こしているいい記事だと思います。

まだまだやるべきことは多いでしょうが、これからも必要な時には政治権力に対峙してゆく姿勢を保つには、取材・報道の力を更に高め、腰を据えて取り掛かる、態勢と姿勢が必要です。
そのためには、今の朝日はまだ道半ばということです。
頑張りましょう。
正々堂々と。それが朝日の道だと信じています。
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