筑紫哲也さん逝去2008/11/09 23:35:32

筑紫哲也さん

筑紫哲也さんが亡くなられました。

いや。
亡くなってしまいました、と言いたい気持ちです。

私が京都で学生生活を始めた頃、TV「こちらデスク」をよく観ていました。

筑紫さんが編集長を始めた「朝日ジャーナル」はほぼ毎週、買っていたと思います。

このような面白い番組、記事を書き続ける筑紫さんが、朝日新聞を退社し、「NEWS23」のTVキャスターとして出てきたときには、なるほど、最適の人選、と思いました。

ライバルと言われた「ニュースステーション」や「報道ステーション」がビビッドに時の話題を掘り下げてゆくのと対照的に、「NEWS23」は、時に歯痒さも感じましたが、じっくりと、今この国で起きていることの根底を探って行こう、という意識が感じられました。

今回の訃報のニュースの中で、筑紫さんが朝日新聞記者だった頃の写真を見ました。
まだ髪が真っ黒で、若さで顔の線も引き締まっていた頃。原稿などで雑多になっている様子の机の前で、右手に煙草をかざし、僅かに笑顔を見せている写真でした。

かっこいい、と思いました。

男の写真を見て、心底、かっこいい、などと思ったことはありません。

松田優作さんだって、かっこいいだろうし、緒形拳さんだって、きっと、かっこいいに決まっています。
けれど、1枚の写真を見て、かっこいい、と思ったことは初めてでした。

1ジャーナリストの死に、これだけ深く感じさせられるとも、思っていませんでした。

私の家は親の代からの朝日新聞で、私も小学5年の頃からはほぼ毎日、1〜2時間かけて朝日新聞を読み続けています。
その読者向けにasparaクラブという会員制HPがあり、そこに筑紫さんが、NEWS23を辞めた後もコラムを続けていたのですが、これまで読んだ事はありませんでした。

その中に、映画に関しての話題で「やってはならぬこと」というコラムがありました。
今年、私が最も憤りを感じた、映画「靖国YASUKUNI」の上映妨害問題について、書かれています。
ここに転載する訳には行かないので、要旨だけを以下に記し、この記事の終わりとします。

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映画好きの筑紫さんはアンジェイ・ワイダ監督の名作、「灰とダイヤモンド」も当然、好きだったのですが、何度観ても筋立てに分かりにくいところがあることにずっと引っ掛かっていたそうです。

ワイダ監督と話をしているうちにその原因が、当時のポーランドの検閲にあったことを筑紫さんは知ります。

当時のポーランドは社会主義体制下。映画は全て国家のカネで作成され、それ故にその内容が政府・党の主張に反しているものは許されませんでした。
「灰とダイヤモンド」の分かりにくさは、その検閲を逃れる故だったのです。

それでも、骨格そのものが反体制的である「灰とダイヤモンド」のような企画がよく通ったものだ、と筑紫さんは感心していましたが。

ひるがえって、アメリカのことを話します。

アメリカは当時の社会主義体制国家とは正反対。

米軍やニューヨーク市を舞台にした映画は数多くあり、その中には軍やニューヨーク市をからかったり批判する内容のものも多くあるのに、当の軍や市に取材や撮影の協力を申し出ても拒否されることは無いそうです。
何故なら、当の作品の内容次第で協力の可否を決めるとすれば、それは容易に「検閲」に繋がるから。

『民主主義の“本家”を自負するアメリカ人がもっとも嫌い、過敏でもあるのは「検閲」(censorship)ということばである。』

そして、今年前半、大きな問題となったドキュメンタリー映画「靖国YASUKUNI」の上映問題を振り返ります。

『民主主義の根幹である表現の自由の観点から、非常にまずい出来事である。国内で思われているよりずっと、国際的にまずい。何かと言えば、「国益」を振りかざす人たちがいるが、この事件こそ、著しくそれを損なっている。』

そんな自由に表現の出来ない国が、チベット民族への抑圧に対して、どこまで中国批判をする資格があるのか、と。

『「靖国」に文化庁が助成金(所管の法人から750万円)を出していることを国会議員たちは“介入”の口実にしているのだが、これをやり出すと「検閲」の輪は直接、間接に無限化しかねない。』

『社会主義ポーランドさえ、こんな乱暴はしなかったから「灰とダイヤモンド」は日の目を見たのだ。』

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私たちの国は、あと一歩で、かつての「社会主義国家」より劣った存在になるところだったのかもしれません。

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です。

筑紫哲也さんのご冥福を、心よりお祈りします。

ありがとうございました。
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