映画「リンカーン」と憲法96条改定問題2013/05/07 00:09:52

スティーブン・スピルバーグ監督の「リンカーン」は、南北戦争、奴隷制度廃止について、その内実の一旦、歴史の裏側を見せてくれます。
しかも、それを、アカデミー賞を受賞したダニエル・デイ・ルイスだけでなく、トミー・リー・ジョーンズ、サリー・フィールド、デヴィッド・ストラザーンらの名演技で堪能出来るという、傑作です。

南北戦争、奴隷制度廃止という大きなドラマと、リンカーンの家族とのドラマとを、ちゃんと目配せを効かせて描くという、日本映画の大作が苦手なところも、しっかりなされています。

しかも、この映画、それだけではありません。

今、この国で大きな問題なっており、夏の参議院選挙で争点となる、憲法96条改定問題に深く示唆する内容となっているのです。

安部自民党や維新の会は、96条が規定する、両議院での3分の2というハードルが高いせいで、改憲が出来ないと言っています。

アメリカ合衆国憲法も、日本国憲法と同じく両議院の3分の2を改憲発議の要件としています。

けれどアメリカはこれまで何度も改憲をやってきました。
その大きな一つが奴隷制度の廃止で、この映画で描かれている中心の話がまさしく、その改憲発議をするために3分の2の議員数をいかにして集めるか、ということなのです。

そのためにリンカーンがどれほどの情熱を以って当たったか。回りの人間を説得し、共和、民主両党の反対勢力と交渉したか。
決して綺麗ごとだけではなかったことも映画には描かれています。

しかしリンカーンは自らの信念に基づいて、時には仲間を騙してまでも事に当たりました。一番大事なことは奴隷制度を廃止すること。それを実現する為に、死に物狂いでやったのです。

しかし、だからと言って彼は、3分の2の賛成が必要というルールを変えようとはしませんでした。
憲法の改正要件は、国民が定めた、憲法の根幹を成すルールだからです。

9条を変えたいのか、道州制を入れたいのか、何をしたいのかを問わず、自分たちのやりたいことを実現しやすいように、まずはルールを変えようなどと言う行為がいかに恥知らずなものか。
この映画を観れば、よく分かります。

96条を変えろと言っている人たちには、この映画を観て、己の姿を顧みろ、と言いたいです。
そして夏の参議院選挙の前に、一人でも多く人に、この映画を観て貰いたいと思います。

因みに、両議院での発議の後、日本国憲法では国民投票で過半数の賛成が必要となっています。
アメリカ合衆国憲法では国民投票はありませんが、代わりに、全州の4分の3の州での批准が必要とされています。

日本国憲法に負けず劣らず「高いハードル」です。
それでもアメリカは憲法改正を行ってきています。
そのためには広く深く、何度にも亘って議論がなされてきたでしょう。
安倍首相は「憲法を国民の手に取り戻す」などと言っていますが、憲法改定に対して、そうやって議論を積み重ねてゆくことこそが、「憲法を国民の手に」ということではないでしょうか。
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