「さようなら、今日は」2008/09/21 00:24:45

シネ・ヌーヴォ九条『市川崑監督追悼特集上映』

「さようなら、今日は」
これは、驚いた!
こんなに面白い映画だとは!!

主人公は若尾文子扮するキャリアウーマン(公開当時はまだそんな言葉はなかったろうが)と京マチ子演じる日本料理屋の若女将。
二人は大学時代からの親友なのだが、どちらも仕事に生き、男などくだらないと歯牙にもかけない。
というとぎすぎすした女性像かといえば、さにあらず。

二人のやり取りは市川崑監督の真骨頂というべきか実に軽妙で、セリフもポンポンと小気味いいくらいに繰り出してくる。
この二人の、実利的で、と言って人間的に薄情な訳でもない、家族に対して愚痴もこぼしつつ思いやりも十分にある、そして、女性としての可愛らしさも感じさせる女性像を見事に描いている。

特に若尾文子演じる女性については、ベッコウぶちというのか、ふちの厚いメガネをかけながらもツンとすましたところを感じさせつつ感じさせない、京マチ子からも指摘される、人を小ばかにしたような妙な笑い方がおかしい、可愛いさを醸し出している。
この笑い方が、なんでこんな笑い方を考え出せるんだ? と思わず思ってしまうくらいにおかしい。

しかも、もう一点、この作品で驚いたのは、市川崑監督が「小津」をやっている、ということだ。
「小津」というのは、そう、小津安二郎である。
そもそもこのストーリーが、上述の女性二人を主人公にしつつ、若尾演じる女性は妹と男やもめの父親との3人家族という、「小津的テーマ」を内蔵しているのだ。

そして、日本間でのローアングルでのカット、ふすまや壁、廊下の直線を強調したカット、更には佐分利信演じる父親と娘の会話や、若尾と京マチ子との会話では、いかにも小津的なセリフのやり取りが行われるのだ。
これがまた、崑監督独特の洒脱で軽妙な小気味よさを感じさせつつ、「小津」を思わせるセリフのやり取りにもなっていて思わず笑ってしまう。
それは小津作品へのオマージュ(パロディ?)としても面白いが、そこにまた若尾と京マチ子の二人の「現代的」でドライかつ厚情な、気持ちのいい関係が表されている、という構造になっているのである。

いやはや、こんな面白い映画が、きっとまだまだ、日本映画の歴史の中には埋もれているのだろうな、と思う。

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