「盗まれた恋」2008/09/25 01:17:02

大阪シネ・ヌーヴォ九条での市川崑監督追悼特集。
観に行くのもこれで最後。今回は3本観ました。

まずは、「盗まれた恋」を観たのですが、

冒頭からビックリ!!
クレジットを見たら確かに音楽は伊福部昭!
何がビックリって、オープニングタイトルに流れているテーマ音楽が、殆どゴジラシリーズの自衛隊のシーンに掛かるテーマ曲!
さすがにあちこちアレンジされているけど、メロディーラインはしっかり残っている
世相を皮肉る内容とは言え、恋愛ドラマですよ!?

映画の出来としては特にいいとも言えないかもしれない。
男女ともハキハキした人物が動き回るが、男(森雅之)の役どころに無理がありすぎかも

ラストで、僕は何にでも粘ってコレコレをやってきた、と得意気に語る男に、傍で聞いていた東野英治郎が、女に失敗したからコレか、と呟くのが面白い。

「恋人」2008/09/25 01:24:13

市川崑監督の代表作のひとつに挙げられる「恋人」。
今回の第一のお目当てはこれでしたが、期待に違いませんでした。

「恋人」
結婚を明日に控えた女性(久慈あさみ)が幼なじみの男性(池部良)をデートに誘う。
互いに秘めていた気持ちが揺れて…。

というストーリーなのだが、冒頭とラストが、式数日後の久慈の両親を池部が訪ねてきたシーンになっていて、本筋は回想の形になっている。
この前後のシーン、言い換えると両親のやり取りが実に効いている。
若い二人の揺れや悔恨を、改めて強調する効果を出しているのだ。

池部良の、ちょっと恨めしそうな趣きで久慈を見つめる目つきがいい。
あっけなくも気持ちを告白しかけるが、久慈の余りにあっけらかんとした反応に、後は自制心を以て一歩距離を置こうとする池部に、久慈は憤慨もし、引っ張るようにデートに連れ回す。
(何と勝手な!)

だが、態度や言葉には表さないけれど、彼をデートに誘い引っ張り回す行為にこそ、彼女の気持ちは表れていた、ということだろう。

真夜中、最終電車に乗り遅れてしまった後、やっと久慈は気持ちを口に出す。
だが、その時にはもう池部は自分の気持ちを抑えてしまっている。

今の自分の気持ちを信じちゃいけない、と池部は言う。
明日になっても君はそう言えるのか、とも、小さく呟くように…。

明日になっても言えるのか、と男は想い、
明日になったら言えないから、今しか言えないから、今、応えて。そうすれば…、と女は想う。

すれ違いの恋が、こうして終わる。


いや、終わらないんだ。
と、久慈の父親(千田是也)は言う。
セイさん(池部)はどうするんでしょうねぇ、と母親(村瀬幸子)が問うでもなく言う。
そのうち、結婚するさ。
お互いに、ずっと想い合っていくのさ……。

結婚し、子どもを産み、その生活を大切に思いながら、心のどこかで誰かのことを、ずっと忘れずにいる。

そうなるんだろう、と娘と幼なじみの男のことを、二人は思う。


池部が訪ねる娘の家は、洋風の裕福そうな家庭。二人がデートで出掛ける先は、喫茶店、映画館、スケート場、ダンスホール。
その二人の装いも高級そうで洒落ているが、娘の両親の、特に父親の語らいも実にダンディだ。
この映画が、戦後6年で生まれていることに驚く。

そして、人は心の中に想いを秘めたまま生きて行くのだ、という思い(常識)が、ほんの30年後には変わってしまうことに、世相の変化の激しさを思う。

「億万長者」2008/09/25 02:08:42

最後に観たのがこれ。

「億万長者」
シュールなシリアス劇とでも言おうか。
戦闘機のジェット音を怖がる主人公(木村功)の様子は、黒澤明監督の「生き物の記録」を思い出させる。

描かれるどん底の生活は、80年代に撮られた『幸福』を連想させ、この間、この国は成長したのだろうか、との思いにとらわれる。

「恋人」や「愛人」のような映像を撮る一方でこのような作品も撮っている市川崑監督の幅の広さを感じる。

それでも、「生き物の記録」のようにシリアス一辺倒でなく、
戦争の陰をまだ引きずりながら急激な経済成長と共に汚職が蔓延している現実をカリカチュアライズして描いているのが、市川崑監督らしいタッチと言えるのだろう。

ただ人物像としては、話の内容上どうしてもジメジメしてしまう木村功の主人公よりも、現実的でありながら小気味の良い、山田五十鈴演じる芸者の方が魅力的に映っている。

この映画のラストは、主人公と、どん底暮らしの青年(岡田英治)が原爆に恐れおののいて走り去るところで終わるのだが、解説を読むと、「結末をカットした配給会社に抗議し、監督は自らの名もフィルムから削った。」とある。
本当はどんなラストだったのか、とても気になる。
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