「恋人」 ― 2008/09/25 01:24:13

市川崑監督の代表作のひとつに挙げられる「恋人」。
今回の第一のお目当てはこれでしたが、期待に違いませんでした。
「恋人」
結婚を明日に控えた女性(久慈あさみ)が幼なじみの男性(池部良)をデートに誘う。
互いに秘めていた気持ちが揺れて…。
というストーリーなのだが、冒頭とラストが、式数日後の久慈の両親を池部が訪ねてきたシーンになっていて、本筋は回想の形になっている。
この前後のシーン、言い換えると両親のやり取りが実に効いている。
若い二人の揺れや悔恨を、改めて強調する効果を出しているのだ。
池部良の、ちょっと恨めしそうな趣きで久慈を見つめる目つきがいい。
あっけなくも気持ちを告白しかけるが、久慈の余りにあっけらかんとした反応に、後は自制心を以て一歩距離を置こうとする池部に、久慈は憤慨もし、引っ張るようにデートに連れ回す。
(何と勝手な!)
だが、態度や言葉には表さないけれど、彼をデートに誘い引っ張り回す行為にこそ、彼女の気持ちは表れていた、ということだろう。
真夜中、最終電車に乗り遅れてしまった後、やっと久慈は気持ちを口に出す。
だが、その時にはもう池部は自分の気持ちを抑えてしまっている。
今の自分の気持ちを信じちゃいけない、と池部は言う。
明日になっても君はそう言えるのか、とも、小さく呟くように…。
明日になっても言えるのか、と男は想い、
明日になったら言えないから、今しか言えないから、今、応えて。そうすれば…、と女は想う。
すれ違いの恋が、こうして終わる。
いや、終わらないんだ。
と、久慈の父親(千田是也)は言う。
セイさん(池部)はどうするんでしょうねぇ、と母親(村瀬幸子)が問うでもなく言う。
そのうち、結婚するさ。
お互いに、ずっと想い合っていくのさ……。
結婚し、子どもを産み、その生活を大切に思いながら、心のどこかで誰かのことを、ずっと忘れずにいる。
そうなるんだろう、と娘と幼なじみの男のことを、二人は思う。
池部が訪ねる娘の家は、洋風の裕福そうな家庭。二人がデートで出掛ける先は、喫茶店、映画館、スケート場、ダンスホール。
その二人の装いも高級そうで洒落ているが、娘の両親の、特に父親の語らいも実にダンディだ。
この映画が、戦後6年で生まれていることに驚く。
そして、人は心の中に想いを秘めたまま生きて行くのだ、という思い(常識)が、ほんの30年後には変わってしまうことに、世相の変化の激しさを思う。
今回の第一のお目当てはこれでしたが、期待に違いませんでした。
「恋人」
結婚を明日に控えた女性(久慈あさみ)が幼なじみの男性(池部良)をデートに誘う。
互いに秘めていた気持ちが揺れて…。
というストーリーなのだが、冒頭とラストが、式数日後の久慈の両親を池部が訪ねてきたシーンになっていて、本筋は回想の形になっている。
この前後のシーン、言い換えると両親のやり取りが実に効いている。
若い二人の揺れや悔恨を、改めて強調する効果を出しているのだ。
池部良の、ちょっと恨めしそうな趣きで久慈を見つめる目つきがいい。
あっけなくも気持ちを告白しかけるが、久慈の余りにあっけらかんとした反応に、後は自制心を以て一歩距離を置こうとする池部に、久慈は憤慨もし、引っ張るようにデートに連れ回す。
(何と勝手な!)
だが、態度や言葉には表さないけれど、彼をデートに誘い引っ張り回す行為にこそ、彼女の気持ちは表れていた、ということだろう。
真夜中、最終電車に乗り遅れてしまった後、やっと久慈は気持ちを口に出す。
だが、その時にはもう池部は自分の気持ちを抑えてしまっている。
今の自分の気持ちを信じちゃいけない、と池部は言う。
明日になっても君はそう言えるのか、とも、小さく呟くように…。
明日になっても言えるのか、と男は想い、
明日になったら言えないから、今しか言えないから、今、応えて。そうすれば…、と女は想う。
すれ違いの恋が、こうして終わる。
いや、終わらないんだ。
と、久慈の父親(千田是也)は言う。
セイさん(池部)はどうするんでしょうねぇ、と母親(村瀬幸子)が問うでもなく言う。
そのうち、結婚するさ。
お互いに、ずっと想い合っていくのさ……。
結婚し、子どもを産み、その生活を大切に思いながら、心のどこかで誰かのことを、ずっと忘れずにいる。
そうなるんだろう、と娘と幼なじみの男のことを、二人は思う。
池部が訪ねる娘の家は、洋風の裕福そうな家庭。二人がデートで出掛ける先は、喫茶店、映画館、スケート場、ダンスホール。
その二人の装いも高級そうで洒落ているが、娘の両親の、特に父親の語らいも実にダンディだ。
この映画が、戦後6年で生まれていることに驚く。
そして、人は心の中に想いを秘めたまま生きて行くのだ、という思い(常識)が、ほんの30年後には変わってしまうことに、世相の変化の激しさを思う。
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