「時をかける少女」(2010)2010/06/23 02:41:05

2010年6月22日(火)/メトロ劇場
★★★★☆(★4つで満点)
製作:2010年度
監督:谷口正晃
脚本:管野友恵
出演:仲里依紗/中尾明慶/安田成美/青木崇高/石橋杏奈/勝村政信/石丸幹二
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思いっ切り、ネタバレありです。







大林監督版で、深町に記憶を消された和子は、それでも心のどこかに残った、自分でも分からない何かに突き動かされて薬学部への道を歩む。そして何年か後、それとは知らぬままに大学の通路で深町とすれ違うラスト・シーンに騒めきを感じさせて、映画は終わる。
例え記憶は消されても、共に過ごした時間は必ず、和子を変えている。「思い」は必ず残っていて人を動かすのだ、ということが、観る者を感動させる。

谷口監督の新作は、前作へのオマージュが感じられる佳い作品だ。主役を演じる仲里依紗も新鮮でいい。
だが、大きく残念なのは、大林監督版にあった感動が欠けてしまった、或いは著しく弱まってしまった点だ。

あかりは深町に記憶を消される。だが、深町がポケットに残した涼太の8ミリ映画を観て、自分でも分からぬままに深く涙を流す。
だがそれは、それまでで終わってしまう。あかりの中に残っている筈の何かが、これからのあかりに何かをもたらすかも知れない、という騒めきは、そこに見られない。
8ミリ映画のラストで去ってゆく後ろ姿だった桜並木を、逆に真っ正面から、元気に歩いてくるあかりを映すラスト・シーンに、谷口監督はその思いを込めたのかもしれない。だが私には、これではあかりが過ごした時間が、単に思い出にしかならない(記憶には残っていないのだから思い出にもならないのだが)ように思えて物足りなかった。

この映画は、あかりが薬学部に合格するところから始まる。だが、その必要は無いのでは無いか。
映画が始まる時を1年早めて、あかりが進路に悩んでいる、これからどう生きようか迷っている高校2年の3月にすればいい。
そして、涼太たちと多くの時間を過ごした後、その記憶が消されてしまったとしても、ポケットに残っていた8ミリ映画を観て、自分でも分からない何かを、あかりは感じる。
それを知るために、あかりは映像関係の学部を選ぶのだ。
自分でも知らぬうちに、涼太と過ごした時間があかりを突き動かすように。
和子が薬学部を目指したように。
そして、テーマ曲「ノスタルジア」が流れるバックに映し出される、映像学部の講義、実習でのあかりの姿。その時の講師が大林監督だったりしたら、きっと私は泣いていたよ。

P.S.
涼太の部屋に「未来惑星ザルドス」のチラシが貼ってあったのにも驚いたが、映画研究会の部室のシーンだったか、「ルパン三世 念力珍作戦」のポスターが貼ってあったのには驚いた。こんなこと言っては失礼だが、映画ファンといえども恐らく誰の記憶にも残っていなかろうこの作品のポスターが貼ってあるとは! 大学時代、この映画を肴に映画サークルの友人と盛り上がったのを思い出す。M君、今どうしているのかなあ。
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